学習指導要綱は10年に1回のペースで改訂され、小学校は2020年、中学校は2021年、そして、高校は2022年から新しい内容で実施される予定です。今回は、全面改訂も多い高校での変更点について見てみたいと思います。
新・学習指導要綱の変更点その1:社会
◎「歴史総合」「地理総合」の新設
現在、高校の社会科は次のような科目構成になっています。
【地理・歴史】世界史A・世界史B・日本史A・日本史B・地理A・地理B
【公民】現代社会・倫理・政治・経済
これが新たに次のように全面改訂され、変更されます。
【必修科目】歴史総合・地理総合
【選択科目】世界史探究・日本史探究・地理探究
「歴史総合」は、これまで日本史と世界史で別々に学ばれてきた近現代史について両者を統合し、全世界的に近現代史を学ぶ科目になります。この学習を基礎として、選択科目で個別に世界史や日本史を学んでいくことになります。単位は、必修科目が2単位、選択科目が3単位です。重要でありながら、これまで学習が不十分であった近現代史について、しっかり学ばせる目的があるようです。
◎「公共」の新設
公民分野についても、以下のように変更されます。
【必修科目】公共
【選択科目】倫理・政治/経済
新たに「公共」という科目ができます。これは、20歳ではなく18歳で選挙権が導入されることを視野に、主権者教育を行うことが目的としてあります。この学習を基礎として、選択科目で個別に倫理や政治経済を学んでいくことになります。単位は、必修科目が2単位、選択科目が3単位です。「公共」は、現状の「現代社会」の授業に似ており、社会の成り立ちや司法、地域、社会保障、国際協力などについて学びます。より主体的に社会に関わる意識を育てようというのがねらいです。
このような社会科目の再編成が最も大きな変更点になります。「総合」的な授業をまず行い、その上で各人の興味に応じた「探究」科目を選択させるというシステムになります。
新・学習指導要綱の変更点その2:国語
「現代文 A・B」「古典 A・B」などとなっている現行の科目が、次のように全面改訂されます。
・現代の国語
・言語文化
・論理国語
・文学国語
・国語表現
・古典探究
「論理国語」とは、論理的な思考力を育てる科目で、「文学国語」とは、小説、随筆、詩歌、脚本などを読み解く力を育てる科目です。「国語表現」は、自分の考えや意見を表現する力を養う科目で、「古典探究」は古文・漢文の授業になります。このような編成を行う背景には、従来の読み取り型授業では主体的な言語活動、話したり書いたりする表現力の育成ができていないということがあります。いわゆるアクティブ・ラーニングは、英語だけでなく国語にも当てはまるということになります。
新・学習指導要綱の変更点その3:英語
英語も全面改訂されます。聞く・話す・読む・書くの「4技能」は今後は「5領域」となります。「話す」技能についてさらに細分化し、「interaction:やりとりを行う」と「production:発表する」に分類。トータルで5つの力を育てようという目的があります。総合的に5つの力を育成する科目として「英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」が、ディスカッションやディベートなど話す力を育てる科目として「論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」が新設されます。こうした科目でどのような教材が使われるのか注目したいところです。
新・学習指導要綱の変更点その4:数学
「数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の構成はいままでと変わりませんが、「数学活用」が廃止され、「数学 C」が復活する予定です。統計やデータの活用を学ぶ科目ができ、ビッグデータ時代に対応できる若者を育てようという意図が読み取れます。
新・学習指導要綱の変更点その5:理科
理科に関しては、これまでと変更はありません。ただし、数学・理科の 2教科を横断する「数理探究」という科目が新設される予定です。
まとめ
高校では、従来の科目編成が大きく変わるのが特徴です。教材も多様化するため、大学受験を見据えて、どのように科目履修をすればよいか悩むケースも出てきそうです。今後、教育現場がどのように変わっていくのか、関心を持って見守っていきたいところです。