高大接続改革について(後編)

2017-09-29 23:40

 
高校教育の現場でいま大きな話題になっている「高大接続」。前回は改革の背景などを中心にご紹介しました。今回は「高大接続」によって、教育現場がどのように変わっていくのかについて解説します。
 

改革のポイント

 
そもそも改革の趣旨は、社会に出てから本当に役立つ力を身につけさせようという点にあります。これは小中の学習指導要領改革でも重視されており、アクティブラーニング(能動的な学習)の重視はこの趣旨の実践の一つです。社会に出てから役に立つ力ということを考えたとき、 高校と大学、そして社会に出てから必要となる能力が現状では異なっています。そこで、より高度な授業が行える高校と大学とをもっと連携させようというのが、「高大接続」改革です。
 

大学入試制度改革もこのような流れの一部に組み込まれています。高校が単に教科を受動的に学ぶ場所ではなく、能動的に学んで社会人として生きて行ける能力を身につける場所へと変わっていくため、大学入試も必然的に従来のような知識偏のテストではなく、思考力が求められるテストへ変わり、ペーパーテストの点数だけでなく面接やポートフォリオなども加味した総合評価になります。
 

高校の授業の変更点

 
◎学力の3要素を広く育成
高校では、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を育成する授業が実施されます。授業科目そのものが大きく変わるわけではありませんが、大学入試が大きく変わるのを受けて、授業内容はより実践的で主体的な学習へ変わっていくと思われます。
 

◎基礎学力テストの実施
2019年度から「高等学校基礎学力テスト(仮)」が実施されます。これは、国語・英語・数学の3教科について高校2〜3年時に実施され、Web受検(CBT)が予定されているテストです。文部省がモデル問題を公表していますが、社会的な問題も少なくなく、学校の勉強がどのくらい理解できているかということよりも、社会に出てから必要とされる能力を測ろうとする意図が読み取れます。
 

大学入試の変更点

 
◎アドミッションポリシー
大学には入学者の選抜にあたって、アドミッションポリシー(入学者受入方針)の策定・公表がが必要になります。大学が求める人材を明確にして、その人材を選抜するのに最適だと思う選抜方法で入試を実施することができるようになります。これまではテストの点数だけで合否がほぼ決まっていましたが、選抜基準がより複雑になる可能性があります。
 

◎ポートフォリオ
ポートフォリオは、これまではAO入試や推薦入試で重視されていました。これが一般の入試でも重視されるようになります。高校調査書のようなものですが、内容と入試における比重が大きく変わってくることになります。
 

この点について、大学主導で興味深い取り組みがなされています。関西学院大学を中心とする7大学が文部科学省の委託を受けて「eポートフォリオ」の開発に取り組んでいるのです。これは、入試の際に評価の対象となる「主体性」を適切に評価するためのシステムで、高校生が高校時代に行った生徒会活動や部活動、ボランティア活動、取得した資格・検定などを蓄積し、システムに参加する大学へweb出願できるようにするという画期的なシステムです。2019年度入試から導入が予定されており、今後の動きが注目されます。
 

◎英語は民間活用試験に
英語に関しては4技能(読む・聞く・話す・書く)をテストする試験に変わるため、これを実現できる民間試験を活用することが予定されています。
 

◎マークシートではなく記述式に
センター試験に代わる「大学入学共通テスト」では、従来のようなマークシートではなく、数学でも一部記述式が導入されます。
 

まとめ

 
グローバル化が進み先行きが見えなくなってきた現代では、自分で世の中を生き抜いていく力は確かに必要です。高大接続改革で、社会をたくましく生き抜いていく子どもが育っていくことを期待したいものです。
 

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