教育格差が問題視される中、高校の授業料無償化がすでに導入され、新しいシステムにも移行して、成果を上げ始めています。さらに大学教育も無償化の動きが出てきました。現状と今後の見通しについてまとめてみます。
高校の授業料無償化とは?
◎高校ではすでに無償化が始まっている
高校では、授業料無償化がスタートしています。まず第一弾として、平成22年〜25年度入学者を対象に、公立高校の授業料が一律無料とされました。この制度が変わり新制度(高等学校等就学支援金)へと移行しています。
新制度では、対象が公立・私立高校になるとともに、申請できる家庭に一定の所得制限(目安として、市町村民税所得割額が30万4200円、年収にして910万円程度)が設けられています。支給限度額は全日制高校で月額9900円で、市町村民税所得割額が一定額以下の場合には、私立高校の生徒に対してさらに就学支援金の加算があります。
大学の授業料にも拡大?
◎大学の授業料はこんなに高い
大学で学ぶには、一般的に下記の授業料がかかります。
・国公立大 535,800円(※1)
・私立大 864,384円(※2)
※1 文部科学省 平成28年度学生納付金調査結果
※2 文部科学省 私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1365662.htm
大学の学費については、奨学金によるサポートがあります。ただし、奨学金は卒業後に返還義務がある貸与型奨学金と、返還不要の給付型奨学金の2種類があり、貸与型奨学金が主であるため、卒業後に経済的な負担が続くことが問題視されています。
◎まず検討されているのは住民税非課税世帯への無償化
住民税非課税世帯(年収約250万円未満)の学生に対して、国立大学の授業料を無償にするというものです。私立大学の学生に対しては全額ではなく一部免除になります。さらに、年収350万円未満の世帯の学生に対しても、国立大学で半額程度の授業料免除が検討されています。
◎給付型奨学金の拡充も検討されている
給付型奨学金を充実させる動きも出ています。大学に通うには、授業料のほかに一人暮らしの費用などもかかるため、その負担を軽減するのが狙いです。授業料無償化の対象にならない世帯でもこちらの制度を活用することができます。
実現にはまだまだ課題が多い
◎いまだ検討段階
大学授業料の無償化については、先の衆議院議員選挙の際に争点となり、無償化を公約した自民党が勝利したため、本格的に議論されることが決まりました。今後の議論の深まりが期待されますが、今のところまだ具体的な動きはありません。
◎反対の声もある
無償化については、反対意見もあります。大きいのは財源確保の問題で、大学を無償化することで約3.7兆円が必要になるとされています。これに対しては、増税や予算の見直し、さらには「教育国債」の発行なども議論されています。また、どの世帯を対象にするか、無償化の範囲も問題になります。一律無償化としてしまうと、富裕層にとって有利となり、教育格差是正という目的が果たせなくなるおそれがあります。
◎幼児教育の無償化も検討されている
教育への経済的な負担軽減という目的から、大学無償化と合わせて幼児教育の無償化も議論になっています。両方の施策を実現するには約5兆円の予算が必要になるといわれており、財源確保はさらに難しくなるでしょう。
まとめ
大学授業料の無償化が実現すれば、家庭の経済事情に関わらず希望する大学に通える可能性が広がります。子どもたちが自分の可能性や夢を実現できるよう、今後の動向を見守っていきましょう。