マシュマロ実験というものをご存知でしょうか。
自制心と社会的成功の関係を示したものとして有名な実験です。
以下、Wikipediaの情報を要約しています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
マシュマロ実験とは、子供の自制心と大人になってからの社会的成功に関連があるかどうかを調査した有名な実験です。「皿の上のマシュマロ1個を15分間食べるのを我慢できたら、ご褒美に2個あげる」と告げて幼児を一人きりにさせ、最後まで我慢することができたかどうかとその子の将来を追跡調査したものです。1970年にこの実験が行われたあと、1988年から追跡調査が始まっています。その結果、マシュマロを我慢できた子どもたちは、大人になって、
・周囲よりも優秀と評価されるようになった
・SAT(アメリカの大学入学共通テストのようなもの)においてマシュマロを食べてしまったグループよりも210点高い得点を得た
・この傾向は生涯に渡って続いた
という結果になっています。
また、被験者の大脳を調べてみた結果、集中力に関係するとされる腹側線条体と前頭前皮質の活発度において、マシュマロを我慢できたグループと我慢できなかったグループとで重要な差異が認められたとされています。スタンフォード大学ではこの実験を「人間行動に関する、最も成功した実験のうちの1つ」と評価したとのことです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この実験、私もテレビ番組で、実際の様子を見たことがあります。
確かにこの実験は、
「将来の大きな成果のためには、目の前の欲求を自制したり、感情をコントロールできるかどうかが重要だ」
という考え方を、非常によく裏付けているように思えます。
我が子に実験してみようかな、と思われた保護者さまもいらっしゃるかもしれません。
しかし、この実験には続きがあります。実は再現実験が行われ(ニューヨーク大学とカリフォルニア大学)、その結果が2018年に発表されています。その内容は以下の通りです。(wikipediaからの抜粋)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
スタンフォード大学での実験は被験者が大学の関係者に限られていたが、再現実験ではより広範な被験者についての実験が行われ、実験結果について被験者の家庭の年収といった要素ともあわせて、複合的な分析が行われた。
その結果、「2個目のマシュマロを手に入れたかどうか」は被験者の経済的背景と相関が高く、長期的成功の要因としては「2個目のマシュマロを手に入れたかどうか」よりも被験者が経済的に恵まれていたかどうかの方が重要であったこと、「2個目のマシュマロ」と長期的な成功は原因と結果の関係ではなく、経済的背景という一つの原因から導かれた2つの結果であったこと、が示された。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうでしょうか。
先に行われたスタンフォード大学での実験では、学内の附属幼稚園に通う子供を対象にしていたため、ある程度、経済状況の似通った家庭の子供が対象となっていたのですね。
一方で2018年の再現実験では、その対象をより広範囲なものに広げて実験が行われています。
その結果、将来の成功と因果関係にあるのは、自制心ではなく経済状況だということがわかったということです。
とするならば、逆に、スタンフォード大学の実験では、経済状況をある程度揃えた対照実験がすでに行われていた、と捉えることもできそうです。
その場合は、やはり「自制心が重要」という仮説にはそれなりの説得力がありそうです。
また、再現実験のほうで「経済的背景」と一言で書いてしまっていますが、更にその奥には
「経済状況のよい家庭であれば、(あとで2個もらえるという)約束がきちんと守られることが多く、一方で、そうでない家庭においては約束は守られないことが多い(→だからすぐに食べちゃう)、という状況が根底にある」
という分析をなさるかたもいらっしゃるようです。
つまり、裕福かどうかが重要なのではなく、約束が守られる環境や教育がなされてきたかが重要、というわけです。
どちらの意見が正しいのでしょうか。論文を詳しく読んだわけではないので私には判断できませんが、でも、真実がどうであれ、「自制心を身につけさせること」も「約束を守る」ことも、どちらも重要な気がしてしまいます。
(真実なんてどんなに優れた学者だってわからないものです。全ては「仮説に対してよく説明できるかどうか」だけなんです。)
ですから、
「なーんだ、自制心は関係なかったのか」とか「結局お金があるかどうかなのね」と切り捨ててしまうのではなく、こういう実験やら論文やらを参考にして、
「たしかに、我が子は自制心が少し足りない気がする。子供への日々の接し方を少し考え直してみようか。」
とか
「たしかに、ちょっとした約束を『相手が子供だから』と軽く考えていたかもしれない。反省しなきゃ。」
などと省みるきっかけにして、今後にどう活かそうか、と考えてみるとよいかもしれません。