アドミッション・ポリシーって、聞いたことがありますか?
大学のホームページを見てみると、各学部ごとに「ディプロマ・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」「アドミッション・ポリシー」の3つが掲載されています。
この3つの関係は以下のようになっています。
①ディプロマ・ポリシー
この大学・学部・学科でどのような人材を育てていくのかを定めたもの
②カリキュラム・ポリシー
ディプロマ・ポリシーを達成するために、どのようなカリキュラムで教育を行っていくのかを定めたもの
③アドミッション・ポリシー
①や②を達成するために、これから入学してくる学生に求める能力や資質を明文化したもの
というわけです。①→②→③という順で定まっていくわけですね。
そして、みなさんが気になる「入学試験」の問題は、③に基づいて作成されているわけです。
つまり、③をよく読むことで、志望する大学の問題がどのような意図でつくられているのか、またはどのような観点で受験生の答案を評価するのかということも見えてくるわけです。←ここが重要!
たとえば、東京大学におけるアドミッションポリシーのうち、数学について紹介してみます。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_01_18.html
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【数学】
数学は、自然科学の基底的一分野として、人間文化の様々な領域で活用される学問であり、科学技術の発展に貢献するだけでなく、社会事象を客観的に表現し予測するための手段ともなっています。そのため、東京大学の学部前期課程(1、2年生)では、理科各類の全学生が解析・代数を必修科目として履修し、文科各類の学生も高度な数学の授業科目を履修できるカリキュラムが用意されています。
本学に入学しようとする皆さんは、入学前に、高等学校学習指導要領に基づく基本的な数学の知識と技法を習得しておくことはもちろんのことですが、将来、数学を十分に活用できる能力を身につけるために、次に述べるような総合的な数学力を養うための学習を心掛けてください。
1) 数学的に思考する力
様々な問題を数学で扱うには、問題の本質を数学的な考え方で把握・整理し、それらを数学の概念を用いて定式化する力が必要となります。このような「数学的に問題を捉える能力」は、単に定理・公式について多くの知識を持っていることや、それを用いて問題を解く技法に習熟していることとは違います。そこで求められている力は、目の前の問題から見かけ上の枝葉を取り払って数理としての本質を抽出する力、すなわち数学的な読解力です。本学の入学試験においては、高等学校学習指導要領の範囲を超えた数学の知識や技術が要求されることはありません。そのような知識・技術よりも、「数学的に考える」ことに重点が置かれています。
2) 数学的に表現する力
数学的に問題を解くことは、単に数式を用い、計算をして解答にたどり着くことではありません。どのような考え方に沿って問題を解決したかを、数学的に正しい表現を用いて論理的に説明することです。入学試験においても、自分の考えた道筋を他者が明確に理解できるように「数学的に表現する力」が重要視されます。普段の学習では、解答を導くだけでなく、解答に至る道筋を論理的かつ簡潔に表現する訓練を十分に積んでください。
3) 総合的な数学力
数学を用いて様々な課題を解決するためには、数学を「言葉」や「道具」として自在に活用できる能力が要求されますが、同時に、幅広い分野の知識・技術を統合して「総合的に問題を捉える力」が不可欠です。入学試験では、数学的な思考力・表現力・総合力がバランスよく身についているかどうかを判断します。
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どの箇所をとっても非常に重要なことが謳われていますが、ここでは、2)数学的に表現する力 について少し述べてみようと思います。
「単に計算して解答を得ることではなく、論理的に説明することが重要」「解答に至る道筋を論理的かつ簡潔に表現する訓練を十分に積むこと」
と書かれています。
普段、高校生の数学の答案を拝見する機会がとても多いのですが、次のような答案が非常に多いです。
・言葉での説明がなく、単なる式の羅列になっている
・言葉での説明はあるが、日本語として間違っている(不自然な表現になっている)
・自分で設定した文字について、何の説明もない
・定理や公式について、適用条件を確認せずに使っている
・読む順番が右に行ったり下に行ったり、斜めに飛んだりして、どのように読めばよいのか、採点官を悩ませてしまう
・同値な変形なのか、それとも必要条件を考えているのかを意識できていないが、答えは合っている(必要条件なら、その後で十分性を満たしているかどうかの確認が必要)
・なんでもかんでも同値記号(⇔)で結んでいるが、同値について理解できていないのがバレバレ
…などなど。
挙げていけばキリがないのですが、このような答案は、上記のアドミッション・ポリシーのもとで行われる採点では、評価が非常に低くなってしまうことが想像がつくと思います。
で、あるならば、これからどのような訓練を積めばよいかの指針も分かる、というものです。
「自分が普段受験している記述式の模試では減点されないから大丈夫」と思ってしまう高校生もいるかもしれませんが、その認識は改めたほうがよいです。
通常、規模の大きな全国模試では、
・あらかじめ作成された採点の基準を守ること、採点官によって得点にブレが生じないようにすること
・無用なクレームが発生しないようにすること
にも重きが置かれています。
少々、記述の仕方がおかしかったとしても、明らかな間違いでなければ、採点官は好意的に解釈して加点してくれる(または減点しない)というケースが、実は多いのです。
実際の大学入試の採点ではこうはいかないと考えて、普段の勉強で訓練を積むべきですね。
高校3年生は、これから過去問演習を本格的に取り組んで行くと思います。
答えがあっているかどうかだけでなく、記述の仕方についても意識を高めた勉強を行いましょう。
自分では書けているつもりでも、第三者から見ておかしなことになっているということはとても多いです。
不安であれば、東セミの各教室の先生に自分の解答を見せてみてください。
東進の生徒さんであれば、過去問演習講座の添削を十分に活用するのも良いでしょう。
高校1年生や高校2年生も、今のうちからきちんとした答案を書けるように練習していきましょう。
興味があるなら、旺文社の「総合的研究 記述式答案の書き方――数学I・A・II・B」が参考になります。冒頭の部分だけでも書店で読んでみると、得られるものが大きいと思います。
以上、一つの例をあげてみましたが、他の教科や他の大学についても同様のことが言えると思います。
みなさんも、是非自分が行きたい大学のアドミッション・ポリシーを一度よく読んで見てください。
そこから、その大学がどのような学生に入学してほしいのかを読み取って、それを普段の勉強に活かしていってみてください。